STORY
いまの私は、いつもよりちょっとかわいい。美容室に行った帰りだからだ。それだけじゃない。久しぶりにヒールを履いて、春っぽいピアスもつけた。いいにおいがする。
ふと、この近くに落ち着けるカフェがあったことを思い出した。以前はよく来ていた、いつも店員さんがニコニコしているカフェだ。
お店に入るなり、すぐさま注文。ここへ来たときはいつも同じものだ。
「ソイラテを、アイスでお願いします」
久しぶりに飲むソイラテ。夏はアイスで、冬は温かいのを少し甘くして飲むのが大好きだ。ソイラテ目当てで、わざわざ来ることもあるくらい。
ワクワクしながら、カウンターの中でドリンクをつくる店員さんを眺める。彼らの動作はどれもスマートでカッコいい。氷と豆乳の入った背の高いグラスに、エスプレッソを注いで。白と黒のコントラストがきれいなラテができる。グラスを傾けてそっと入れるんだなぁ。
待てよ、と私はひらめいた。あれをマネすれば、家でもおいしいソイラテがつくれちゃうのではないだろうか。以前ホットのソイラテをつくろうとした時は、沸騰させて分離してしまった。難しいと思っていたけれど、アイスなら上手にできるかもしれない。
思い立ったら即実行、が私のモットーだ。お手本とすべきソイラテを味わいながら、少し早足で街を歩いた。
帰りのコンビニで、インスタントコーヒーと豆乳を。豆乳は、調製豆乳と無調整豆乳、迷ったから両方買っちゃった。無調整ならスッキリいけそうだし、調製は甘みがあって、癒されそう。でもとりあえず、無調整豆乳で試してみよう。
家に着いたら、グラスを洗って、氷を用意して。段取りを組み立てるのに、私の頭は忙しかった。
とはいえ、工程はあっという間だ。豆乳に、インスタントコーヒーを注ぐだけ。カフェで見た店員さんを思い出しながら、豆乳の上へ慎重にコーヒーを重ねていく。イメージトレーニングバッチリ。きれいな2層ができあがった。
スマホで写真を撮って。早速ひとくち。これこれ、と思わず声に出る。ちょっとした贅沢が、明日からは自分でもつくれそう。この春もおうち時間は長いけど、新たな楽しみも生まれていく気がしています。
新しい、春の贅沢
fin.