STORY
テレビからは、観測史上最速で東北の桜が満開になったことを伝える夕方のニュースが聞こえる。いつの間にかすっかり日も長くなっていて、なんだか今年は、急に冬が終わっていったなぁ。
毎年春になると意識し直すのが、家族の健康だ。ちょっと気になるお腹周りが、厚着で隠せなくなってくるころ。夫の、健康診断が行われるころ。この1年は食べることだけが楽しみだったのもあり、いっそう気になっている。
美容だのダイエットだのにうるさくなった娘を、私たち夫婦もちょっと見習ったほうがいいわね、なんて思ってしまうくらいだ。
「お母さんたちも、七海みたいに毎日豆乳飲もうかしら」
豆乳は好きだったけど、そこまで意識して毎日飲んでいたわけではなかった。夫に関していえば、健康を気にかけることすらしていないだろう。冷蔵庫に入れっぱなしの、特濃調製豆乳のことを想う。
そのことばをきくやいなや、娘は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情。最近豆乳についてかなり調べたみたいだ。
「まずね、豆乳はコレステロールゼロなの。お父さん、気になるでしょ? それから植物性のタンパク質がとれるし、調製豆乳なら甘くて飲みやすくて、それから……」
娘のプレゼンは止まらない。すっかりハマっているようだ。そんなに言うなら、コレまで以上に私たちも豆乳生活を試さねばなるまい。娘にグラスの準備をお願いして、私は氷と豆乳を。コーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れようとしていた夫へ、声をかける。
「ねえ、今日はアイスコーヒーで。ソイラテにしてみない?」
いいね、と夫も乗り気な様子。妻と娘が揃って何かオススメしてくれるのは、何であれちょっと嬉しいのだろう。そういうのは、夫のかわいいところかもね。
夫は暑がりだから、氷を多めに。私は、身体を冷やしたくないから少なめ。ボトルコーヒーと豆乳を、優しく注いでいく。コーヒーの苦手な娘は、紅茶でソイミルクティーにするようだ。
家族で過ごす、ブレイクタイム。夕暮れ手前、緩やかな時間が大好きだ。
「お、これは甘くてうまいね」
夫は早くも、ソイラテがお気に召した様子。飲み過ぎはダメよと私がたしなめ、豆乳だからちょっとくらい大丈夫だよと娘がフォローする。
健康を意識しつつ、3人の私たちの手元には、ちゃっかりおやつ。身体にやさしいと謳うものを選んでみたから、まあいいか。
家族で過ごす楽しい時間が、これからも穏やかに続いていきますように。そのためには健康も、みんなでしっかり考えていきたいな。
家族と、豆乳と、春の健康
fin.