STORY
私たち家族は、結構アクティブ。土曜日も朝寝坊したい派はいなくて、3人とも早起きだ。
今日は、お母さんが朝から美容室に行くということで、私とお父さんが家事をする。
何でかって? 帰りに私の大好きなお店でパンを買って来てくれると、お母さんが言っていたからだ。パンのためなら、お手伝いくらい頑張っちゃうもんね。
お父さんが洗濯担当。私はお掃除担当。掃除機をかけるのは結構得意だから、サクサク進む。予定より1時間も早く家の中はキレイになってしまった。
お母さんが帰ってくるまで、どう時間をつぶそうかと悩んでいたら、「何かつくっちゃおうか」とお父さんが声をかけてきた。パンと合わせて、ちょっといいランチ。お母さんを驚かせようという提案に、私は乗り気になった。お父さん、優しいじゃん。
冷蔵庫の中を見ながら、何をつくるか、作戦会議。パンに合わせるなら、スープか。サラダか。それとも……。
「そうだ、キッシュはどう?」
いつもお母さんが豆乳で料理をつくってくれるのを見て、真似てみたいと思っていたのだ。豆乳と卵でタンパク質が摂れるし、野菜も入る。栄養価的にも、アリじゃない?
いいねいいね、とお父さんも大賛成。意外にもなめらかな包丁さばきで、玉ねぎやピーマンを刻んでくれた。
私は、卵と豆乳を丁寧に混ぜる。愛情込めてね。しかし、耐熱皿で混ぜるだけなんて、カンタン。天才。私でも全然面倒くさくなくできちゃうのがいいね。
「あと15分くらいで着くよ」
お母さんからのメッセージを確認したら、キッシュをトースターへ。時間のヨミも完璧。熱々のキッシュを、帰宅と同時に食卓へ運ぶ算段だ。
トースターの目盛りがあと2分となったところで、玄関が開く音がした。いい匂いがするわね、とお母さんが部屋に入ってくる。
いいから手を洗ってきてよと、お母さんを急かしつつ。私はパンをお皿に。お父さんはキッシュを食卓に。洗面所から帰ってきたお母さんに、ジャジャン!と準備したランチを見せる。
「ええ〜! ふたりでつくったの?」
驚きながらも、嬉しそうなお母さん。やったねと、私とお父さんはアイコンタクトをした。サプライズは大成功。熱々のうちに、と3人でいただきますをして。お母さんは喜んでくれるし、キッシュはおいしい。たまにはこうやって、私とお父さんが頑張るのもいいじゃん、なんて思っていたりする。
父と娘の、サプライズランチ
fin.