STORY
私たち家族3人は、どちらかというと忙しくしている方が好きなタイプだ。とはいえ、最近はみんな、少々詰め込み気味。娘は部活の大会前で、その上最近では大学受験に向けた模試も増えてきた。夫は担当しているプロジェクトが佳境のよう。ふたりとも帰りの遅い日が増えた。
晩御飯は家族揃って食べるのが、いとう家のルールだったけれど。まあ、そういう時期もあるわよね。
……と心配をするなか、娘の模試が終わった翌日の朝、彼女の方から話しかけてきた。
「模試も終わったし今日は部活もないし、夜ご飯を楽しみに帰ってくるね!」
それを聞いた夫も、
「じゃあ僕も早めに帰れるように頑張ろうかな。」
と続く。おやつは我慢しなきゃ、おいしいものがいいな、とアレコレ言いつつ、ふたりとも元気に出かけていった。久しぶりに3人揃う夕食、何がいいだろう。
今年最初の鍋は、野菜たっぷりの豆乳鍋に決定。家族みんなが大好きな豆乳は、こんな時にもやっぱり大活躍。味付けは白だしでできるから、失敗もしない。安定感。娘の好きな水菜は多めに、夫の好きなきのこは2種類。お肉は、私の好きな豚肉で。ちょっと味見をして、よし合格。白だしの香りと豆乳のまろやかさ、やっぱり合うわね。
ふたりが帰ってきたと同時に、野菜を鍋に入れる。お皿を出して、卓上コンロをセットして、とふたりに指示出しも。みんなで揃っていただきますをすれば、お鍋を囲んで会話が始まる。
ちょっと、ネギ足してちょうだい、とか。そのお肉はまだ煮えてないわよ、とか。ついつい口を出す私に、娘は苦笑い。
「知ってる。お母さんみたいの、『鍋ブギョー』って言うんでしょ」
夫もすっかり乗っかって、
「いやぁ、おいしいですよ。お奉行様、さすがです」
なんて言っている。はいはい、と流しながら、こういう感じも久しぶりだなぁって。今シーズンもいろんなお鍋をつくってみるから、そのぶん家族の時間も、増やしていこうね。
母は豆乳鍋奉行
fin.