STORY
いとう家は朝、みんな豆乳を飲んでいる。娘が特にハマっていて、「おかーさん、豆乳!」と声をかけてくるのだ。自分でやりなさいよ、と言いながら3人分。グラスに注いで、テーブルに置いておくのがルーティンだ。
いとう家は朝、みんな豆乳を飲んでいる。娘が特にハマっていて、「おかーさん、豆乳!」と声をかけてくるのだ。自分でやりなさいよ、と言いながら3人分。グラスに注いで、テーブルに置いておくのがルーティンだ。
しかし、最近はちょっと違うようだ。夫は「コーヒーにしようかな」と言うことが増えた気がするし、娘も「じゃ私紅茶にしよー」なんて言っている。
「寒くなってきたし、あったかいもの飲みたくてさ」
と夫が言い、なるほどと思う。たしかに、寒くなってきたこの時期、朝イチに冷たい飲み物を身体に入れるのは気がすすまないのだろう。そうそう、身体を冷やすのは美容にもよくないよ、と娘が玄関の方から声だけで同調しているのも聞こえてきた。
スーパーへ行って、いつも通り豆乳コーナーへ。ふたりとも飲まないなら、少し量を減らしてもいいのかしら。
悩みながら豆乳を手に取ると、パッケージには「ホッ豆乳」と書かれていた。ホットの豆乳か。ソイラテなんかもあるくらいだし、ホットの豆乳、いいかも。なんでも、好きにアレンジできるらしい。そういうの、あのふたりは好きだしね。
翌朝土曜、起きてきたふたりに、ホッ豆乳を提案してみる。
「じゃあ、スープっぽくしてみようかな。」
と、率先して動き出したのは夫。コンソメを入れて飲むことにしたようだ。
「お母さんは?」
マグカップを用意しながら、娘の視線。そうね、じゃあはちみつを入れてみようかしら。今日は寒いから、生姜も入れたいな、とお願い。
レンジで温めている間、娘と夫はいいアレンジを相談中。甘いのがいいね。チョコも入れてみたい!でもカロリー高いかなぁ。その分運動すればいいよ。そんな何でもない会話が聞こえてくる。電子レンジの前の1分50秒は、思った以上の会話を生んでくれるらしい。
電子レンジができ上がりをお知らせしてくれて、娘からあたたかいマグカップを受け取って、ちょっとほっこり。娘は結局マシュマロを浮かべることにしたらしい。欲張って、豆乳が見えなくなるくらい入れようとしてしまうのが、まだまだかわいいところだ。
ふたりはまだ盛り上がっているよう。チャイティー味の豆乳も温めてみたい!キャラメル味も捨てがたいかな、話しながらこちらを見る。
「お母さんはどれがいい?」
それぞれのホッ豆乳を手元にお気に入りを見つける朝。新しい家族の習慣が始まりそうです。
落ち着きをくれる、朝のホッ豆乳
fin.