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STORY

「ちょっと休憩しない?」

 リモート会議が終わった様子の夫へ、声をかける。そうしようかぁ。素早くノートパソコンを閉じて立ち上がり、夫はキッチンへやってきた。

 1LDKでふたりがリモートワークをするのは、結構大変だった。リビングの隅には、急ごしらえの書斎スペース。会議がある方がそちらを使い、もう一方はダイニングテーブルで仕事をするルールになっている。正直気は遣うが、まあ、これくらいの方が緊張感があっていいのかもしれない。

 リモートワークが始まったころと時期を同じくして、家ではドリップコーヒーをよく飲むようになった。朝はブラックコーヒーを片手に業務を開始し、休憩するときはカフェラテだ。だんだんこだわり始めて、ミルを買ったり、コーヒー豆を何種類も揃えたりするようになっていた。毎日豆を選ぶのが、夫は楽しいみたいだ。

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「今日はどれにしようか?」

 何か深入りのやつ。任せるよ。即答して、私は冷蔵庫から出した豆乳を見せる。続いて、グラスに氷を入れながら。

 「豆乳でつくるの? 」

 でたでた。夫は好きなものにはこだわる一方、知らない食べ物や飲み物には保守的だ。

サラッとした甘さでおいしいよ。暖かくなってきたしさ、アイスのソイラテなんか、飲んでみたいと思わない?私がオススメすれば、最初は乗り気じゃなくても、夫は必ず試してくれる。ソイラテも、できれば好きになってほしい。

 深入りのやつなら何でもいいと、私が断言したのには理由があった。夫といつもカフェラテを飲む時間、毎日色んな豆を楽しみながら、私はいつもソイラテと合うコーヒーを探していたのだ。

 私としては、苦味の強いものが好みだ。きっとこれなら、初めて飲む夫も気に入ってくれるだろう。

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 おそろいのグラスを片手に、リビングへ。ふたりで向かい合って座る。コーヒーの香りは癒やされるが、夫の一口目には、同時に緊張もしてしまう。

「うーん……、あ、いいね! アリだと思う」

 だから、素直においしいっていいなさいよね。苦笑いしつつも、ちょっと安堵。気に入ってくれた様子で嬉しくなる。

「へぇ、コロンビアとか、あとガテマラも合うんだって」

 夫は早速スマホを片手に、豆乳と合うコーヒーについて調べ始めたよう。これはきっと、明日も午後はソイラテタイムになるぞ。ふたりでいろいろ試して、それぞれに好きなものが、見つかればいいね。

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それぞれのソイラテ

fin.

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