STORY
最近、夫の様子がいつもと違う。嘘をついているとか、隠しごとをしているわけではなくて、なんだかちょっと、お疲れ気味の様子。
スーパーまでの道すがら、夫を元気づけようと考えてみる。私たちは夫婦だし、チームだ。夫がちょっと大変なときは、私がちょっと頑張るとき。そういうバランスなのだ。
夫の好きなものといえば、やっぱり「食」だろうか。そうそう、以前の連休はいろんなところへ行って食べ歩きしたな、と思い出す。 商店街で揚げ物を買って、あのときのビールは最高だった、とか。中華街で食べた麻婆豆腐を夫がいたく気に入り、その後我が家では麻婆豆腐が流行ったな、とか。
豆乳はあまり得意としない夫だけれど、不思議なことに豆腐は大好物。特に麻婆豆腐には目がないんだよね。ひらめいた私はすぐに検索。あったあった、豆乳入りのレシピ。お疲れ気味なカラダのことも考えて、今日はこのアレンジに決定。
「ごめんごめん。買い物、ひとりで行かせたね」
夫は帰宅した私を玄関で出迎え、キッチンへと荷物を運んでくれた。
「今日の晩ごはんは麻婆豆腐にしよう!」
夫とは二人で料理をすることが多いけれど、今日はソファーでゆっくり休んでもらって。おいしく食べてくれるかな、元気になってもらえるかな、と思いながら長ネギを刻むのもたまにはいい。にんにくとしょうがの合わさったフライパンからはいい香りがしてきた。豆乳を加え、煮込んだら完成だ。
出来上がりが待ち遠しいのか、いつの間にか夫は冷蔵庫からビールを取り出しセッティングしていた。急いで一緒にテーブルにつき、熱々を大きく一口。うん、まろやかだけどコクがあって、これはたくさん食べちゃいそう。夫も目が合うと、うんうんとうなずいてくれていた。気に入ったようだ。
「いつもより優しい味が体に染みるよ!ラー油の香りも すごくいいね。」
わかりやすくご機嫌になった夫に、思わず笑ってしまう。そりゃあそうさ。豆乳と、私の優しさが入ってるからね。
「豆乳には驚かされてばっかりだよ。いつもおいしいものを教えてくれて嬉しいよ。」
元気になってよかった。こちらこそ、いつもおいしそうに食べてくれて嬉しいよ。
夫婦のバランス麻婆豆腐
fin.