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STORY

「この服、まだ着る?」

「こっちの本は、誰かに譲ろうか」

今日は、夏の大掃除と断捨離。朝からクローゼットや本棚も全部チェックして、掃除をしつつ、徹底的にものを減らしていく算段だ。多趣味だと、ものっていつの間にか増えていくんだから。

夫がやけに静かになったなと思い振り返ると、座り込んで、新婚旅行のときのフォトブックを見返していた。働いてよ〜と思いつつ、こういうとき、ついつい見ちゃう気持ちもわかる。

夫が手を止め「そうそう、これ」と指差したものがあった。オーストラリアのカフェで食べたケーキ。ラミントンだ。ココナッツにくるまれた、フワフワのチョコレートケーキ。甘いのに軽くて、感動したのを覚えている。

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「また食べたいよねぇ」

 そんなふうに夫が言うなら、私がはりきりましょう。なんて、やさしいふりをしているが、実は私も食べたくなってしまったのだ。断捨離は一旦夫に任せ、スーパーへ行ってみることにした。

オーストラリアのお菓子だけれど、近いものは日本にある材料でも作ることができる。卵、チョコレート、ココナッツ。今日はここに、豆乳を追加してみようと思う。

 オーストラリアでは植物性ミルクがよく飲まれていて、スーパーにはいろんな種類のものが並んでいた。珍しいパッケージを見ながらワクワクしたなぁ。そんな風景を思い出しながら、私は豆乳を手にとった。思い出と一緒に、夫もおいしく味わってくれたらいいな。

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 泡立てた卵と砂糖に、薄力粉や豆乳を加えて。少しずつ、オーストラリアに近づいていく。ケーキが焼き上がり、家中にいいにおいがし始めると、夫がキッチンにやってきた。チョコレートとココナッツファインをまぶし、あとは固めるだけ。洗い物をしていた私に、夫は「コーヒーでも淹れようか?」と訊いてくる。こだわりのソイラテをお願いしますね、なんて答えてみた。

 チョコレートが固まって、ソイラテを淹れたら、ふたりでソファに座ろう。夫の手には、改めてオーストラリアのフォトブックだ。手作りのラミントンとともに、思い出を振り返る。こういうのも、楽しみ方のひとつだねって。新しい思い出がまた、増えたような気がしています。

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ラミントンで、
オーストラリアの思い出をもういちど

fin.

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