STORY
「晩ごはんどうするー?」
リモートワークをしつつ、休憩中の夫が声をかけてくる。もう晩ごはんを考える時間かと、集中していた手を止める。私はこういうとき、何でもいいよ、と答えてしまいがち。そして、何でもいいよは困るなぁ、と夫から言われがち。
じゃあ、せーので食べたいもの言おうよ。夫の提案に、乗ってみる。せーの……
「担々麺!」
「豆乳鍋!」
……合わない。ホント鍋好きだねと笑われるが、夫こそ担々麺が好きすぎるだろうと、私はこっそり思っている。こういうときは大体じゃんけん。そして、大体私が勝つ。で、またかーって、笑う。
そこで、提案。じゃあ今日は私の好きなお鍋にするから、その代わり、食事当番代わってあげるよ。ちょっと思いついたことがあって、夫には内緒で、やってみることにしたのだ。
ひとりで買い出しに行って、材料を揃える。豚ひき肉、ラー油、ニラ。あと、豆乳も。材料は、ほぼ担々麺。でも今日は担々麺じゃない。豆乳担々鍋である。
夫の大好きな担々スープは、豆乳を使うことで本格的な味わいが再現できる。二人の意見を一緒にすれば、夫も喜ぶし私も大好きなお鍋や豆乳を堪能できるなと、ピンとひらめいたのだ。
帰宅して調理を始めると、材料を見た夫は不思議そうな顔。もしかして担々麺? と聞いてくるが、私はニヤニヤしながら敢えてはぐらかす。できてからのお楽しみですよーって。
ひき肉はレンジで調理。にんにくとしょうがの香りは、元気が出そうだ。みその香りもいい。そこに豆乳のコク。すごい。こんなのおいしいに決まってるじゃんね。
ぐつぐつと沸く鍋を食卓に運べば、夫は理解した顔。なるほど!ありがとう! と何度も言っていて、そういうのは夫のかわいいところだ。ラー油を垂らして一口食べれば、
「ビール飲んじゃう?」
なんて聞いてきたりして。シメにうどんも用意してるけど大丈夫?なんて言いながら。結局ふたりで半分こして飲むのだけれど。
好きなものが違っても、一緒に楽しむことが、私たちは得意だ。そして、こんな生活が明日も明後日も、続いていったらいいなと思う。
好きなもの、両方!豆乳担々鍋
fin.