STORY
散歩にでかけた夫が、白ワインを片手に帰ってきた。どこもボジョレー・ヌーボー解禁って言ってて、ワイン飲みたくなっちゃってさ。でもなぜだか、選んでるうちに白ワイン買っちゃったんだよね。気分屋の夫らしい、買い物の光景が浮かんでくる。
散歩にでかけた夫が、白ワインを片手に帰ってきた。どこもボジョレー・ヌーボー解禁って言ってて、ワイン飲みたくなっちゃってさ。でもなぜだか、選んでるうちに白ワイン買っちゃったんだよね。気分屋の夫らしい、買い物の光景が浮かんでくる。
白ワインは嬉しい。大好きだ。一方で、はて困った、と考えているのが、今の私だ。なぜなら先ほど買い物に出た私は、商店街でおいしそうな練り物を買ってきたばかりだから。今夜はおでんに……と言おうとしたまさにそのとき、夫からの白ワインが目の前に現れたのだった。
まあ、たまにはタイミングがズレることもある。諦めて今日は、メニュー変更かな。……と考えていたが、夫の提案に突破口を見つけることになる。
「魚介とかホワイトソースとかと、合うらしいんだよね。ごはん何がいいかなぁ?」
魚介ならば、練り物もアリかもしれない。ホワイトソースじゃないけれど、ちょっとクリーミーな味わいにしてみれば……。以前テレビで見た、アレンジおでんを思い出す。
「豆乳おでんってのはどう?」
初めての提案に、夫は興味を持ったよう。豆乳で煮るの? 何味なの? と質問をしながら早速手を洗い始めた。
練り物は油抜き。野菜は大根と、ちょっと洋風のものも追加してみよう。トマト、あと、アスパラもいいかも。さつまいもとかもいいんじゃない?と、横から提案してくれるのは夫だ。ナイスである。
白だしと豆乳で、いい感じの和洋折衷。豆乳って、こんなときにも使えるんだね。
煮込んでいる間に、一足先にふたりは乾杯。一口サイズのチーズなんかつまみながら。ほろ酔いでおでんが煮えるのを待つ。なんて贅沢なんだ。
おだしのいいにおいで部屋が満たされて、夫がアツアツのお鍋をテーブルに持ってきてくれる。
「お待たせしましたー!」
「待ちかねましたー!」
私は大好きなごぼう天を、夫は平天を、まずはひと口。アツいアツいと言いながら、続けて冷えた白ワインをふた口。いつものおでんと比べて、クリーミーでコクがある。これは、ワインに合うぞ!
「これ、ワインに合いすぎてたくさん飲んじゃうなぁ」
と言いながら、夫はワインのおかわりをついでいる。わかるわかる。ふたりがそれぞれ選んだもので、いい食卓になったね。
ワインと豆乳おでん
夫婦それぞれのきまぐれ
fin.