STORY
日曜日の午後。普段なら、そろそろコーヒーでも淹れようと誘ってくる夫だが、今日はなんだか違うようだ。
「こう寒いとさぁ、甘いものが飲みたいよね。ココアとか」
おやめずらしい。と、私は思う。なぜなら夫は、コーヒーやお酒が大好き。甘い飲み物を飲んでいるところなんて、ほとんど見たことがなかったからだ。
きっと夫が今飲みたいのも、お砂糖たっぷりの甘いココアではないかもしれない。そこでブラックチョコレートで作る、ちょっと大人のホットチョコレートを提案してみる。
提案すると、夫は早速興味を持ったよう。買い物へ行く道すがら、ホットチョコレートについて説明すると、夫はますます期待を高めたようだ。今日は豆乳で試してみてもいい?寒い日は、コクのある豆乳で作ると、あたたまりそうじゃない?と、夫に追加のご提案。うんうん、そうしよう。と、夫も楽しみしてくれているようだ。

普段コーヒーを淹れるより、ちょっと時間はかかるけれど。ふたりでやれば、それも楽しいものだ。私が豆乳にチョコレートを溶かす様を、夫は横からじっと見ている。つくりかたを覚えたら、次はつくってもらうかしら。なんて。
生姜やシナモンなどスパイスを効かせて、マーマレードの甘みと酸味。ドライオレンジを飾ったら完成だ。
「見た目からして絶対おいしいじゃん」
と言いながら、スマホに写真をおさめる夫。いつもはしないのに、SNSに投稿しちゃおうだなんて言っている。わかりやすくテンションが上がる夫はたまに、かわいいというか、面白いというか。

マグカップだけど、ふたりで控えめに乾杯の動作をして、あたたかいのをひとくち。うん。苦味がありつつ、まろやかでいい感じ。豆乳とブラックチョコレート、成功だなぁと、私も満足だ。
向かいで夫も、満足したよう。
「豆乳とチョコレート、こんなにおいしいんだ。生姜やオレンジもいい感じ!」
と言いながら最後まで飲みきってくれた。また知らない飲み物一緒につくろうねぇ、なんてニコニコしている。そんな夫と笑い合いながら、こういうのも理想の冬の過ごし方だなぁなんて、考えている。

冬を甘く楽しむ 大人の豆乳ホットチョコレート
fin.